SEOは育っている。業者も一生懸命やってくれている。変えれば、またお金と手間がかかる。
だから少し高いと感じても、今のままにする。
医院が欲しいのは、新しいホームページではありません。
今を壊さずに、必要なときだけ動ける「逃げ道」です。
院長が動かないのは、料金に納得しているからではありません
クリニックのホームページについて話を聞くと、よく次のような言葉が返ってきます。
SEOとして十分育っているから、変えるのが怖い。
結構お金は取られているけど、すでに投資してきたから。
またお金がかかるんでしょ?
説明されても、何がいいのか全く分からない。
今やっていることが変わるなら、そっちの方が面倒。
業者も一生懸命やってくれているけどね。料金はそんなものかと思っていた。
一見すると、現在の制作会社に満足しているように見えます。
しかし本音は、必ずしもそうではありません。
変えた後に起きることが分からない。だから、判断を先送りしている。
現在のホームページ業者にとって、本当の競合は別の制作会社ではありません。「何もしない」という選択です。
育ったSEOを壊したくない不安は正しいです
「ホームページを変えると、検索順位が落ちるのではないか」
この心配は、考えすぎではありません。
Googleも、サイト移転や大きな変更の際には、一時的な順位変動が起こり得ると案内しています。また、複数の大きな変更を同時に行わず、一つずつ進めることを勧めています。
だから、いきなり全面リニューアルする必要はありません。
- ドメインを変えない
- 既存URLをむやみに変えない
- 検索流入のあるページを残す
- 内容を引き継ぐ
- 変更を小さく分ける
必要なのは「全部変えること」ではなく、残すものと、自院へ戻すものを分けることです。
1ページ4万円より、断れない状態の方が問題です
ある大手の歯科ホームページ業者では、次のような料金例がありました。
- Instagramへの導線バナーを掲載する:4万円
- 新しいページを作る:3,000文字まで4万円
- 新しいページを作る:7,000文字まで7万円
もちろん、制作には人件費がかかります。内容の設計、文章の調整、画像作成、確認作業まで含めれば、金額だけを見て「高すぎる」とは断定できません。
問題は別のところにあります。
少し直したいだけでも、自院には別の方法がない。
その状態では、見積もりが妥当かどうかを比較することすらできません。
料金の高さ以上に怖いのは、断れないことです。
WebMCPは、AIにホームページの機能を使わせる仕組みです
WebMCPは、Webサイトにある機能を、AIが理解して操作できる形で公開するための仕組みです。
たとえばクリニックのホームページで、次のような情報や操作をAIへ伝えられる可能性があります。
- 診療内容
- 料金
- 担当医の診療日
- 予約可能な日時
- 予約フォーム
- 事前問診
従来のAIは、ページに書かれた文章を読んで説明することが中心でした。
WebMCPでは、ホームページ側が「これは予約機能です」「名前と希望日時はこの項目です」と、入力条件付きでAIに伝えます。
すると将来的には、患者さんがフォームを一項目ずつ探して入力する代わりに、AIが会話の中で必要事項を整理し、予約操作を補助できるようになります。
ただし、WebMCPを入れればAIの検索結果で上位表示される、という話ではありません。
AIに見つけてもらう対策と、見つけてもらった後に機能を使ってもらう仕組みは別です。
患者さんは、フォームを一項目ずつ埋めなくてよくなります
たとえば患者さんがAIに、次のように伝えたとします。
来週の水曜午後に、親知らずの相談で予約したい。名前は○○です。
AIは、医院が公開した予約機能の条件に合わせて情報を整理し、不足している項目だけを患者さんへ確認できます。
事前問診も同じです。
患者さんが話した内容を、AIが問診票の項目に沿って整理する。患者さんは内容を確認し、問題がなければ送信する。
長いフォームを前にして離脱していた人にとって、予約や問診のハードルは下がります。
ただし、AIが勝手に病歴を推測して入力してよいわけではありません。患者さん本人の確認、個人情報を扱う安全な環境、入力範囲の制限が必要です。
また、予約完了まで行うには、現在使っている予約システム側にAPIなどの連携手段が必要です。WebMCPだけで、連携できない予約システムが突然使えるようになるわけではありません。
Cloudflareで技術的なハードルは下がっています
Cloudflareは、WebMCPに対応したサイトやツールを試しやすくする機能を提供し始めています。
たとえばBrowser Renderingの環境では、WebMCPで公開されたツールを検出し、実行を試せます。また、AI Searchでは検索機能をMCPサーバーとして公開できます。
これは、AIがWebサイトの情報や機能へ接続するための土台が整い始めた、ということです。
ただし、Cloudflareを使えば既存のホームページが自動でWebMCP対応になるわけではありません。ホームページ側の設計と実装は必要です。
また、医院が自分でページを更新できるようにするには、WebMCPだけでなく、AIによる編集、公開前の承認、変更履歴、元に戻す仕組みまで必要です。
WebMCP業者に依存するだけなら、何も変わりません
ここは注意が必要です。
WebMCPが普及すると、導入支援をうたう業者も増えるでしょう。そして、内容が分からないまま契約すると、今度は別の形で高額費用が発生する可能性があります。
これまでの「新しいページを作るので4万円」が、「AI用の機能を一つ追加するので○万円」に置き換わるだけかもしれません。
導入費用がかかること自体は問題ではありません。専門家の設計や安全対策にはコストが必要です。
問題は、導入後に医院側で何も確認できず、何も変更できず、他社へ移すこともできない状態です。
WebMCPを導入する目的は、新しい業者に依存することではありません。
医院が選べる状態をつくることです。
最初にするのは、リニューアルではありません
AI時代のホームページ運用を考えるなら、まず次のことを確認します。
- ドメイン、サーバー、CMSの契約名義は誰か
- Search Consoleやアクセス解析を医院側で見られるか
- 文章、画像、URL、ソースコードを持ち出せるか
- 料金、診療内容、採用情報を自院で更新できるか
- 予約システムに外部連携の手段があるか
これらを確認した上で、既存サイトを残しながら、小さく進めます。
全面リニューアルは、その後に本当に必要だと分かった場合だけで構いません。
ホームページを変える前に、変えなくてもよいか確認します
- SEOが落ちそうで、今のホームページを触れない
- 更新費用が妥当か判断できない
- ドメインやサーバーの名義が分からない
- WebMCPに興味はあるが、業者の説明を比較できない
この状態で、いきなり制作会社を変える必要はありません。
ICLでは、最初から全面リニューアルやWebMCP導入を勧めるのではなく、今のホームページを残したまま、医院が何を所有し、どこまで自院へ戻せるかを整理します。
現在の制作会社へ連絡する前に、今の契約を続けてよいのか、変更するなら何だけを変えるのかを確認します。
参考資料
- Google Search Central:URLの変更を伴うサイト移転
- Google Search Central:URLを変更しないホスティング移転
- Chrome for Developers:WebMCP
- Cloudflare:Browser RenderingでWebMCPを試す
- Cloudflare:AI SearchをMCPクライアントへ接続する
※ホームページ制作費の例は、楢原が確認した歯科ホームページ業者の料金情報をもとにしています。
Author
楢原 峻
株式会社Innovation Careers Lab. 代表取締役
歯科医師 / 歯学博士 / 口腔外科専門医
長崎大学病院口腔外科で12年間、臨床・研究・教育に従事。医局長・外来医長・病棟医長を歴任。現在は歯科医院を中心に、AI・DX導入支援と経営コンサルティングを提供しています。

